暗号資産市場は2025年12月入りとともに再び急落し、弱いマクロ環境が投資家心理を揺らしている。
今回の圧力はアジアから発生している。日本の2年国債利回りが2008年以来の水準に上昇し、日本銀行(BOJ)が示したタカ派姿勢を受けて円が急速に強含んだ。
利回り上昇と円高により、長年続いてきた円キャリートレードが巻き戻されており、これが暗号資産や株式などのリスク資産から投資マネーを押し出し、世界的なデレバレッジの動きを加速させている。
一方、短期投資家や小口投資家が売り急ぐなか、オンチェーンデータでは、いわゆるスマートマネーが今回の下落局面で静かに資産を積み増していることが示されている。
また、反暗号資産で知られるバンガード(Vanguard)が、これまでの姿勢を転換し、ビットコイン、Ethereum、Solana、XRPのETFへの投資を認める方針を示したことも相場に小休止をもたらしている。同社は運用資産10兆ドル(約1,600兆円)規模であり、影響力は大きい。
なぜ暗号資産市場は下落しているのか
暗号資産市場は依然としてマクロ環境に左右されやすい。金利の高止まり、米政府の機能停止などによる流動性の低下、そして米連邦準備制度理事会(FRB)の3年以上にわたるバランスシート縮小が背景にある。
円キャリートレードとは、低金利の日本円で資金を調達し、米国株式、債券、暗号資産など利回りの高い資産に投資する取引のことだ。長年にわたり日本銀行がゼロ金利政策を維持してきたため、この取引は魅力的だった。
しかし、日銀が利上げの可能性を示したことで日本国債利回りが急上昇し、円が強含んだ。
借入コストの増加と円高によりキャリートレードは採算が悪化し、ポジションの巻き戻しが進む。これが世界的な流動性低下とリスク資産の売り圧力につながっている。
ただし、一部のアナリストは市場が底値圏に近づいているとの見方を強めている。日銀が引き締めを示した2024年7月、FRBが同時に利下げに転じたことで円キャリートレードが急速に解消され、ビットコインは短期的に急落したが最終的な底値は1週間以内に形成された。
Into The Cryptoverseのベンジャミン・コーウェン氏は、今回も同様のパターンが繰り返される場合、12月中旬までに安値を付ける可能性を示唆する。
In July 2024, the Fed cut rates while the BOJ raised rates, leading to the unwind of the carry trade.
Bitcoin capitulated into it, and found a low 1 week later.
Good chance this happens again on December 10th (Fed cuts, BOJ raises rates).
So maybe Bitcoin finds a low mid-Dec? pic.twitter.com/Vd6d3k3fUh
— Benjamin Cowen (@intocryptoverse) December 1, 2025
さらに、過去の動きを理解する投資家が増えたことで、市場がこの展開を前倒しで織り込む可能性もある。大口投資家やヘッジファンドが予想される転換点前に積み増しを始めることで、新たな上昇局面が従来よりも早く始まるという見方だ。
いま買うべき暗号資産:Bitcoin、XRP、Chainlink など
大口投資家やスマートマネーはすでに押し目買いを進めている。
以下では、新たな強気相場の前に検討されている主要暗号資産を紹介する。
Bitcoin(BTC)
Bitcoin価格は円高と日本国債の急伸を背景に83,800ドル(約1,340万円)まで下落した。
しかし、その後は86,400ドル(約1,380万円)超まで反発し、100週指数平滑移動平均線(EMA)を上回って推移している。
BTCは週足チャートでRSI(相対力指数)およびOBV(オンバランスボリューム)との間に強い隠れた強気ダイバージェンスが出現しており、これは重要な強気シグナルとされる。
また、バンガードによるBitcoin買いも無視できない。同社は10兆ドル(約1,600兆円)超の運用資産を持ち、ブラックロックに次ぐ規模である。
ウォール街の著名投資家でBitMine会長のトム・リー氏は、2026年1月までにBitcoinが新たな最高値を更新するとの見方を維持している。
Tom Lee predicts $BTC will hit a new ATH before the end of January 2026.
What do you think? pic.twitter.com/cwXU3RtSfN
— Ted (@TedPillows) December 1, 2025
Ethereum(ETH)
Ethereumは、多くのアナリストが「いま買うべき暗号資産」として挙げている。
まず、バンガードがEthereumの現物ETF投資を容認したことで、ETHへの資金流入が期待されている。
さらに、FRBの量的引き締め(QT)が終了した局面では、EthereumはBitcoinより強いパフォーマンスを示す傾向があり、これは資金コストの低下と市場の新規資金流入によるものだ。
実際に大口投資家による買いも増えている。LookonchainおよびArkham Intelligenceのデータによると、本日だけで1億2,000万ドル(約192億円)相当のETHが購入された。
また、過去に2024年10月11日の急落を的中させた「Bitcoin OG」と呼ばれる投資家が、2億2,000万ドル(約352億円)分のETHを買い増していることも確認されている。
Solana(SOL)
Solanaは「いま買うべき暗号資産」としての存在感を強めている。
現物Solana ETFは過去12日間で6億3,700万ドル(約1,020億円)の資金流入を記録しており、機関投資家の需要は急増している。バンガードの顧客がSOL ETFや投資信託にアクセスできるようになることで、この流れはさらに強まる見通しだ。
SOLのテクニカル指標も堅調だ。OBVは主要サポートを再テストしており、価格も主要な上昇サポートに戻ってきている。
前回このサポートを維持した局面では、Solanaは底値を形成し、その後新たな強気相場が始まった。
Solana $SOL is once again testing a key support trendline that has sparked strong rebounds since 2023. pic.twitter.com/4RKvu2Cmrq
— Ali (@ali_charts) December 1, 2025
XRP(XRP)
XRPは、FRBの量的引き締め終了を背景に、注目度の高い暗号資産の一つだ。
2019年にFRBが引き締めを終了した際には、Ripple(リップル)に対するSECの訴訟が逆風となったが、今回は規制面の不確実性が当時より大幅に後退している。
さらに、バンガードが暗号資産市場に前向きな姿勢を示したことで、XRP ETFにはすでに7億ドル(約1,120億円)近い資金が流入しており、SOL ETFの流入額を上回るペースだ。
テクニカル面では、トム・デマーク指標(TDシーケンシャル)が週足で買いシグナルを点灯しており、底入れを示唆している。XRPは現在2ドル(約320円)の主要サポート付近にあり、押し目買いの余地が広がっている。
$XRP just printed a TD Sequential buy signal on the weekly chart.
Rebound incoming!? pic.twitter.com/lqriD7QrMs
— Ali (@ali_charts) December 1, 2025
Chainlink(LINK)
Chainlinkは、暗号資産市場で最も割安と見られている銘柄の一つだ。
アナリストのダン・ガンバルデロ氏は、FRBが量的引き締めを終了する局面でLINKが強い値動きを見せる傾向を指摘する。
また、デジタル資産運用会社のGrayscale(グレースケール)は、LINKの現物ETFの承認を受けており、近く取引開始が予定されている。
🔥 UPDATE: Grayscale Chainlink ETF set to launch this week as first spot $LINK ETF, per ETF analyst Nate Geraci.
Grayscale will convert its Chainlink private trust to ETF format following SEC filing approval. pic.twitter.com/GSt86B4SWO
— Cointelegraph (@Cointelegraph) December 1, 2025
ChainlinkはDeFi(分散型金融)分野の基盤技術として機能しており、SWIFTやFRBとの連携も進むなど、機関投資家からの需要は大きい。Onchain Lensのデータによれば、過去6か月で3,800万ドル(約608億円)相当のLINKを購入したクジラも存在する。
Bitcoin Hyper(HYPER)
新たなレイヤー2銘柄であるBitcoin Hyper(HYPER)は、今回紹介する資産の中で最も上昇余地が大きい低時価総額の暗号資産として注目されている。
プレセール段階から需要が高く、これまでに2,900万ドル(約464億円)近くを調達している。市場全体が不安定ななかで、複数の大口投資家が6桁規模の購入を行っている点は特筆すべきだ。
最近では、あるクジラが155 ETH(約5,400万円)を売却し、その資金で50万ドル(約8,000万円)分のHYPERを購入したことも確認されている。
Bitcoin HyperはBitcoinのレイヤー2として位置づけられることから、Bitcoin本体の価格上昇(15万ドル=約2,400万円を目標とする見方もある)と連動する可能性が高いとされる。
さらに、HYPERの購入者は年率40%のステーキング報酬を得られる仕組みもあり、長期保有を促す要因となっている。
そのため、HYPERを次の「10倍暗号資産」とみなす投資家も増えている。






